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栽培についての考え方

野菜は「作るもの」ではなく「できるもの」

野菜は「自ら成長する力」を持っています。

私たち農家は、野菜がその力を存分に発揮できる

そんな環境を用意することが仕事だと考えています。

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有機というより、農薬化学肥料不使用。

私たちの農場は有機栽培(有機JAS認証取得)です。ただ、あまり「有機」というネーミングにはこだわってはいません。それよりも、農薬化学肥料を使用しないで栽培することに重きを置いています。それは、野菜が本来持つ「成長する力」を発揮するためには、それが重要なことだと考えているからです。分かりやすくいえば、過剰な養分や行き過ぎた投薬によって、野菜が自らの不足する養分を摂りに行く行為や、害虫を忌避するための行為(能力)を減退させてしまうからです(※野菜はただじっとしているように見えますが、害虫から身を守るために化学物質を放出して天敵となる昆虫、不足している養分を供給してくれる微生物を集めたりしています。)。つまり、良かれと思ってしている行為が逆に野菜の成長を妨げているとも考えられるわけです。しかし、まったく手を掛けないということとは違うのが難しいところで、手を掛けなくてはいけない時も多々あります。では、それをどう決めるのか。「とにかく、よく見る」これしかないと思っています。よく見て、考えて、想像して、自分なりに理解して、判断する。それしかできません。ある意味、子育てに通じる部分もあって、見守るとはうまいこと言ったもんだと感じさせられます。

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多様性のある畑へ

​​病気や害虫による被害は、どの農家にとっても頭の痛い問題です。私たちは、病害虫の被害を抑える方法として、畑の多様性を高めることを目指しています。多様性を高めるとは、野菜に害を及ぼす病気や害虫を農薬などによって排除するのではなく、むしろ害虫も含む多様な生き物(植物や、虫や目に見えない微生物、小動物など)が生息する環境としていくことで、病害虫に対する天敵関係は当然のこととして、人間がまだ知りえない重層的な生き物たちの関係が築かれることを意味しています。その多様性のある環境の中、野菜も他の生き物と同様に在ることで、自らの力で生育することを期待しています。この多様性の実現のためにとても大切なものが「雑草」と言われる様々な植物たちです。一般的には忌み嫌われる存在ですが、私たちにとっては、とても大切な仲間で、それは多くの生き物たちの貴重な住処として存在しています。2020年から、この住処をより確実に、そしてより豊かなものとするため「畝間不耕起栽培」を始めました。畝間不耕起栽培とは、畝間を初めとした畑の不耕作部分を不耕起にする方法です。この栽培方法の導入により、ゴミムシ・クモ・テントウムシ・アオガエルなどの天敵生物が目に見える形で増えたことと共に、作物生育に変化が見られるようになってきています。また、耕起部分を減少させたことで耕起労力の削減、機械の小型化が実現できました。本栽培方法は、2024年度から山梨県農業技術センターの技術実証事業対象に採択され(課題名:省耕起栽培による環境再生型有機農業の実証)、先進栽培方法として4年間の時間を掛けて、山梨県・山梨大学の方々と共に、その有用性の実証を行っていくことになっています。この実証事業の中で、圃場内、特に土壌内や雑草内での実際や営みなど様々なことが明らかになっていくことが期待されますし、それを目の当たりにできることを楽しみにしています。

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輪作を大事に

有機栽培を行うには、輪作がとても大切です。輪作とは、同じ作物を作り続けないということなのですが、正確にいうと同じ「科」の作物を作り続けないということ。「科」という言葉は、あまり馴染みがないと思いますが、例えばみなさんがよく食べる小松菜、水菜、大根、キャベツ、ブロッコリーなどはすべてアブラナ科という「科」の野菜、レタスはキク科、トマトやピーマン、じゃがいもはなんとナス科なんです。アブラナ科であれば最低1年、ナス科であれば3~5年は間隔をあけて栽培していくことを「輪作」と言います。で、よく売れる野菜がアブラナ科に偏っているので、この輪作が結構難しいんです。よく売れる野菜ばかり偏って栽培していると、たちまち詰将棋のように圃場がアブラナ科で埋め尽くされてしまうので、そうではない野菜もしっかりと栽培していくことが大事なんです。でも、栽培するということは販売するということであり、輪作をちゃんとやっていくためには、栽培した野菜をしっかりと「売る」ことができないと目指すべき輪作を実現することはできないんです。また、「科」という要素の他にも輪作をする上で考えなくてはいけないものが畑の状況です。水捌け、陽当り、石の多少、そして長らく悩まされているのが、猿・鹿・猪による獣害です。猿がよく出る畑では、ナスやトマト、きゅうりなどの果菜類はご法度です。そんなものを植えた日には、ホテルのビュッフェのように入り浸られてしまいますから。そんな様々を考えてジグソーパズルのように畑のレイアウトを決めていくのは、もちろん難しいのですが、でも、それも有機農家の面白みのひとつと捉えていつもやっています。

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おいしい一択の品種選定

野菜には数多くの品種があります。その数、小松菜だけでも200種類以上あると言われています。地域特性や栽培の容易さ、収量の多さ、収穫のし易さなど、農家によって何に重きを置くかで品種選定は変わってきます。そんな中、私たちの選定基準は「おいしさ」一択です。だからタネのパンフレットにある「食味良好」「抜群のおいしさ」という文字には弱いんです。なかでも、松本にある(公財)自然農法国際研究開発センターが提供する品種を好んで使っています。なぜなら、自然農法で育種された品種には、野菜が本来持つ強さを感じると共に、昔たべたような、どこか懐かしい感じのある「おいしさ」を持っているからで、甘味の強さにばかり力点が置かれている昨今には珍しい品種が多く取り揃えられています。そして、品種選定と共に大事だと考えていることは、その品種を自分たちの農場の気候にあったものに育てていくということです。私たちが農業を始めてまだ十数年しか経っていませんが、このわずかな期間でも気温の上がり方や、雨の降り方などが変化しています。そして、この先どうなっていくのか残念ながら人間には予想できません。もしかしたら、専門に研究されている頭のいい人たちには分かるのかもしれませんが、少なくとも私たちにはわかりません。なんせ、鈍った五感と使い古した肉体、固定概念で凝り固まった脳みそしかありませんので。であるならば、野菜たちの力を借りる方が賢明だという考えに至り、数年前から可能な限り自家採取にて種を繋いでいます。私たちの農場のある地で育った情報がしっかりとDNAに刻み込まれた種は気候変動にも順応してくれるはずです。少なくとも、人間が机の上でこねくり回して作った栽培計画より、よっぽどまともな成果を上げてくれると思っています。

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​地域での有畜複合を目指して

畑には少しだけ肥料を入れています。肥料といっても、私たちの農場からほど近い白州にある平飼い卵農家「鬼塚たまご農園」の鶏舎の床土で、スコップでほじくり返していただいて来ているものです。なぜ、こちらの床土をいただいているかといえば、なんていっても鶏たちの食べているものの素性が明確であるからです。とうもろこしを使わず、近隣の減農薬栽培されたお米のくず米や米ぬか、そば殻、その他蛎殻などのカルシウム飼料を自家配合にて与えています。鶏たちの腸内環境がいいのでしょう、床土の多くを占める鶏糞の匂いは嫌味なものではなく、鶏たちが元気に走り回り、始終ついばんでいるので発酵が十分。だから、全体としてサラサラなのです。分類としては鶏糞肥料になるのでしょうが、一般的な鶏糞肥料の概念とは一線を画すものだと考えています。そして、昨年から鬼塚さんちの鶏のエサにうちの野菜を加えてもらっています。出荷段階のくず野菜や虫害の野菜などで、まだまだ量は少ないですが、有畜複合の循環農業をできるところから始めています。

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